第31章 俺にしなよ〜徳川家康〜
「ずるい…」
「何が?」
わかっているくせに、首を傾げて私を見る家康をちょっと睨む。
薄く笑って、とぼけている。
ずるいよ…。
かっこよすぎる。
そんなの、ときめくよ。
不意打ちとか。
そんな風にさらっと言うのは、ずるい。
私が顔を赤くしていくのを確認すると、家康は満足そうに笑った。
その笑顔が眩しくて目を細めてしまう。
あぁ、家康の笑顔はいつも綺麗だ。
太陽の光みたいに、私の心を照らしてくれる。
「ね、想像できたでしょ?」
してやったり。
そんな顔をされているのに、私の心臓の音は静かになってはくれない。
ーーー…「俺にしなよ」
再び言われ、私は戸惑いながらも家康を見た。
綺麗な瞳が揺れ、私はもう家康に心を奪われかけている…そう思った。
どうして、私にそんなこと言ってくれたのか。
これからわかる日が来るのかしら。
私は口を開けて返事をしようと息を吸った。
「家康…」
悔しいけど、あなたの喜ぶ言葉しか出てこないと思う。
だって、その笑顔に弱いんだもん。
きっと、家康の思惑通りに…。