第31章 俺にしなよ〜徳川家康〜
ーーーこの安土城で誰を恋人にしたいか
昼下がり、縁側で家康と二人でお茶を飲みながら話していた。
何気ない会話だったはずが、なんでこんな話題になったのか。
寒いと人恋しいよね。
恋仲、欲しい?
誰となら?
此処の武将だったらさ
…みたいな流れだった。
私は、ここの武将一人一人の顔を思い浮かべ、首を振った。
「みんな緊張して…無理」
「信長様はわかるけど、秀吉さんや政宗さんも?」
「うん。みんな色気があり過ぎて…」
私が目を瞑り控えめに首を振ると、家康はへーと興味なさげに呟く。
「じゃあ、三成は?」
「じゃあって…投げやりな」
「そんぐらいでいいんだよ、あいつは」
「うーん。いい子過ぎて、汚れた私のようなものが近づいちゃいけない気がする」
「純粋そうってこと?」
「そう」
「いや、それはない」
きっぱり言われ、私は笑った。
「家康って三成くんに厳しいよね」
「みんなが甘すぎるんだよ」
家康が溜息を吐きながら言うので、ますます笑ってしまう。
なんだかんだで気にかけているんだもん。
「じゃあ、光秀さんは?」
家康に横目でちらっと見られ、ドキッとした。
一瞬、目が泳ぐ。
それを悟られないように外を見ながら答えた。
「光秀さんは…遠目で眺めるくらいでちょうどいいよ。謎すぎて怖い」
あの人は男性として魅力的過ぎる。
その分、近づいちゃいけないオーラがすごい。
安易な気持ちで好きになってはいけない。
絶対に。
そんな存在感だ。
「ふーん…」
意味ありげに頷かれ、私はドギマギした。
光秀さんが異性としては、一番気にはなる。
でも、まあ、ないな。
話が続かないもの。
そう思ってはいたし。