• テキストサイズ

イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第30章 涙を流す場所〜織田信長〜



「……また泣いているのか?」
「すみません…」
「よく泣く奴だな」

信長様はゆっくり手を伸ばし、私の流れた涙をそっと親指で拭ってくれる。
微笑み、いつものように優しげに揺れる瞳が私を捕らえた。

あぁ、また涙が流れてしまいそうだ。
こんな風に優しくされたら。


「一人では泣くな…その涙は俺の前だけで流せ。これからもだ。わかったな」

私が黙って何度も頷くと、ふわりと信長様の腕の中に閉じ込められる。
信長様の心臓の音が耳に心地良い。
私もそっと手を伸ばして、信長様を掴んだ。

「お前は目が離せんな。俺以外の奴に心を揺さぶられおって。全く」
「…そんなこと、ないですよ」
「嘘をつけ」

…本当です。
母が言ってました。
泣いては駄目、
女の子は涙を安易流してはいけない。
そう教わって来たんですから。

『本当に好きになった人の前だけで、流すのよ』

…そう、母の声がした気がした。





「こう見えても身持ちは堅いんですよ、私。」
「…知っている。俺の前でしか泣いていないのも、我慢していたのも、な」


「俺に惚れているのだろう?」

はい…。

私の声は信長様に聞こえただろうか。
この涙が返事だと、わかって貰えたのかもしれない。



ずっと好きでした。
貴方がこの醜い泣き顔の私を受け止めてくれた、あの日から。



信長様は抱きしめていた腕を緩め、ふと私を見ると聞いてきた。

「先程の『月が綺麗』とはどういう意味だ」

信長様はずっと引っかかっていたらしい。
さすがですね…。

「愛してる…という意味です」

私が照れながら言うと、信長様は少し呆れたような顔をする。

「なんだ。まどろっこしい奴だな。それならさっさと言え」
「…女心がわかってないですね」
「言うではないか。覚悟は出来てるんだろうな」


「また泣かせてやろうか?」



そう、意味ありげに甘く囁く。

貴方になら、泣かされても構わない。
だって、やっとそれ以上の関係になれるのですから。





/ 462ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp