第1章 朝が来るまで待って 〜明智光秀〜
「あの、一つ聞きたいんですが」
「なんだ?」
「どうしてあの日、何もしてこなかったんですか?」
光秀さんは、片眉を上げた。
横を向いてため息をつく。
「そういう艶ごとは口にしないものだ」
「そう…なんですか」
がっかりした私を見て、光秀さんは苦笑した。
「お前は初めてだろう?」
「え!」
「違うのか?」
「そう…です。」
しゅんとして下を向いた。
重かったのだろうか。
この時代でも、初めては重いだけなのかな。
「勘違いするな、流れでそうはなりたくなかっただけだ」
そう言った。
大切にしてくれているってことなのかな。
そう思うと嬉しかった。
「わかったか?」
「は、はい。えっと…手を出してもらえるように頑張ります!」
何を頑張るんだか…そう呟いて、光秀さんはおでこにキスをした。
「気長に待つとしよう」
色っぽくそう言われて、おでこが熱くなった。
恥ずかしくなり、手でおでこを隠す。
「お前は本当に…昼と夜とは大違いだな」
「昼間は少女のようで、夜は…」
「夜は?」
「秘密だ」
長い指先を口元に当てて、にやりと笑った。
「俺だけが知っていればいい」
二つの影が一つになった…。
「噂は噂だったか」
「政宗さん、何ですか。急に」
「いや…。」
そう言うと、政宗は家康の肩をポンポンと叩いて去って行った。
「良かったね…。幸せになりなよ」
2人の後ろ姿を見ながら
家康が呟いた。