第28章 趣味の悪い君に〜猿飛佐助〜
葉月さんの部屋に着いた時、もう中は暗かった。
寝ているのだろうか?
枕元にプレゼントを置こうとそっと近づく。
「佐助くん…?」
葉月さんの声がした。
段々と目が暗闇に慣れてくる。
「起こしたかい?」
「ううん。もしかして、もう越後に帰っちゃうの?」
「…あぁ」
沈黙になった部屋。
俺はそっと葉月さんの手を取る。
唇を噛んだ後、決意し口を開いた。
「本当は、君をこのまま奪い去りたい。俺は…君が好きなんだ」
我ながらキザだ。
でも、真実なんだ。
俺は君の返事を待つ。
こういう時って何故こんなにも長く感じるのだろう。
「ありがとう…」
ありがとうから始まると、大体良くない。
経験上、俺はわかるんだ。
「私も攫って欲しい。佐助くんに…。私もずっと好きだったから」
まさかだった。
嘘だろう?!
顔には出ていないが、俺は今…非常に喜んでいる。
俺はそのまま君を抱きしめていた。
キスは…して良いのだろうか。
いや、駄目だ。
キスで終わらす自信がない。
我慢しろ、俺。
俺はそっと離れると、葉月さんのおでこに唇を当てた。
彼女は可愛らしく微笑んだ。
うん、良しとしよう。
葉月さんはプレゼントの撒菱と煙玉も喜んでくれた。
ほら見ろ。
みんな女性が幸村が知っているような人ばかりじゃないんだ。
いや、彼女は趣味が悪いんだった。
ということは俺って…。
いやいや、そんなことはどうでもいい。
俺は幸せだ。
君を手に入れたんだから。
「…家康公とは、どうなったの?」
「家康は整い過ぎてて。断った」
なんだか複雑な気持ちだが、美人はイケメンを選ばないんだな。
容姿の部分は自分の力量で充分に足りているのだから。
きっとそうなのだろう。
「佐助くんってイケメンだね」
そう言われ、俺はずっこけた。
美的感覚、大丈夫だろうか?
「私ね、自分から好きになった人に告白されたの初めて。だから、嬉しいな」
聞きましたか、皆さん。
なんて可愛いんだ。
このまま命が尽きても悔いはない。
いや、駄目だ。
彼女と生きていこう。
どこまでも。
幸村、今すぐ葉月さんを連れて行くよ。
驚くだろうな。
当たり前だ。
俺が一番驚いているのだから。
ー…クリスマスの奇跡があることを知ったんだ。