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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第28章 趣味の悪い君に〜猿飛佐助〜



そんな時だった。
君から相談があると言われて、二人で茶屋に行ったんだ。
まるで逢瀬をしているかのようで、俺は舞い上がった。
それは短い時間だったが…。

「家康に告白されて…どうしたら良いかな?」


家康ってあの徳川家康?!
俺の最も尊敬し、愛してやまない彼に?
しかも、君はさらっと呼び捨てじゃないか。

…しかし、それとこれとは話が別だ。
どんな奴にでも君を渡す気はない。

だって、俺は葉月さんのことが
ずっと…

「良いんじゃないかな。家康公なら、君をきっと幸せにしてくれると思う。俺は…応援するよ」

こういう時、表情筋が死んでいて良かったと思う。
君に悟られる事はない。
そうだ、俺は君が幸せならそれでいいんだ。
例え、俺の手の届かない場所に行ってしまっても。

…そうだ、これでいい。


一瞬、君の顔が…寂しそうに見えたのは俺の思い上がりなのだと思うから。



「結局、好きだって言えなかったな」
安土城を見ながら、俺は呟いた。

きっとあの後付き合ったのだろう。
結果は怖くて聞いていないが、偵察に行って見た感じでは、彼女は幸せそうに笑っていたからそうに違いない。
良かった…
そう思っている筈なのに、胸が苦しい。

人間というものは、無くしてからその有り難みを知る。
なんて哀しい生き物なんだ。

幸村の言う通りだ。
俺は馬鹿だった。



ガツン。
頭を殴られ、振り向くと幸村がいた。

「幸村、痛い」
「だから、無表情で言うなって。お陰で目が覚めただろ?悩んでねーで、伝えてこいよ」
「いや、もう遅い」
「別にいいじゃねーか」
「彼女を困らせてしまう」
「困らせてこいよ…好きなんだろ?」

幸村はいざという時に、決める男だ。
男の俺でも惚れてしまうな。

「…俺、来世は幸村と夫婦になりたい」
「気持ちわりぃこと言ってんじゃねーよ」
幸村はいつものように笑う。
「お前、"くりすます"までに想いを伝えるためにわざわざ越後から来たんだろ。それを忘れんなよ」

そうだ、幸村…。
ありがとう。


俺は急いで安土城に向かった。
君に想いを伝えるために。

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