第28章 趣味の悪い君に〜猿飛佐助〜
好きな気持ちだけは、誰にも負けないつもりだが…。
この安土城の武将達は、どうやら皆んな彼女がお気に入りらしい。
忍び込んで偵察した結果、俺はすぐさま気づいた。
末恐ろしい…。
こんな歴史上の方々がライバルだなんて。
俺は今、猛烈に感動している。
ーーー「…何言ってんだ、お前」
そう俺の脳内で幸村がツッコミを入れる。
そうだ、そんなことを言っている場合ではない。
これは戦いだ。
彼女を振り向かせるには…どうしたらいいんだ。
この並々ならぬイケメン達を差し置いて。
「そりゃあ、側にいろとか。君の味噌汁が毎日飲みたいとか言えばいいんじゃねーの?」
冬空の中、男二人で団子を食べながら俺は幸村に相談をした。
幸村が照れ臭そうに俺にアドバイスをする。
すまん、慣れないことを言わせてしまって。
…だが、味噌汁は流石に古臭くないか?
いや、幸村に聞いた俺が悪いんだ。
せっかくだから、頑張ってくるよ。
俺は、葉月さんの部屋に訪れ、挨拶を済ますとすぐさま伝えた。
「味噌汁が…毎日飲みたい」
はっ。…しまった、君のを抜かした。
一番重要な部分なのに。
「佐助くん、味噌汁好きなの?私もー。ホッとするよね」
「…あぁ」
俺は項垂れながら、深く頷いた。
結局、その日はなんの味噌汁が好きかで盛り上がってしまった。
彼女はシンプルに豆腐とワカメらしい。
なんと彼女らしいんだ。
可愛らしい。
「…馬鹿か、おめーは」
わかっている。
幸村は怒ると思っていたよ。
当然の反応だ。
「いや、俺もそう思っているけど、緊張して上手く話せないんだよ」
…そもそも、こんな恋愛偏差値が低い二人で話し合っていて、意味があるのだろうか。