第27章 私は猫になりたい〜石田三成〜
「私は、あなたが好きですよ」
この言葉ですら、優しさから出た言葉とわかってしまうから悲しい。
此処の武将達は、私に甘過ぎるから。
つい勘違いしそうになってしまうからやめて欲しい。
「私も、三成くんが好きだよ」
三成くんが一瞬、哀しげな顔をする。
私は、やっぱりあの猫が羨ましい。
三成くんに何も考えずに近づける、あの猫が。
私も三成くんに抱っこされてみたい。
ただ可愛いと頭を撫でて貰いたい。
「こんなにも悔しいのは初めてです。あなたに私の言葉がまるで届かない」
「ううん、届いているよ」
「あなたはまた、私の言葉を流そうとしてますね?」
だって、そうだもん。
そのまま受け入れるほど、私はもう純粋じゃないの。
戯れとか、その場凌ぎの言葉なんて、いらないの。
今までの恋が思い出され、私の耳と心を塞ぐ。
素直にこの言葉を聞けない。
「…抱きたいくらい好きだ、と申し上げたら信じて頂けますか?」
おおよそ、三成くんらしくない発言だ。
流石の私も驚いた。
「あなたが叶わない恋をしているのは知っています。でも、だからって私の想いまでなかったことにして、塞ぎ込まないで下さい」
…知っていたの?
それなのに、関係のない事ばかり私に話しかけて笑いかけていたのね。
いつも一緒にいたのに。
「どうか、私の想いだけは信じて下さい。あなたは…素晴らしい方です。私にとって、あなた以上はありません」
嬉しかった。
すごく嬉しかった。
身体の関係だけのあの人の言葉より。
他の人と結婚の約束をしていた、あの人の甘い囁きより。
三成くんの言葉は、きっと嘘はない。
三成くんは私に顔を近づけ、私に問いかけた。
「葉月様…。嫌なら拒否して下さい」
拒否、できない。
だって私は…
あなたの好きな猫に嫉妬していたのだから。
「私を抱きしめてくれる?」
あの猫みたいに気まぐれに噛んだり、逃げ出しても…ずっと可愛いと言ってくれる?
愛してくれる?
三成くんは、きつく私を抱きしめてくれた。
「もちろんです。ずっと抱きしめています」
私の目から涙が溢れてくる。
そうか…私は泣きたかったんだ。
ずっと。
この怪我が治る頃には、この心の傷も治っていますように。
あなたがまた不器用に包んでくれるはず。
この分厚い包帯のように。