第27章 私は猫になりたい〜石田三成〜
結局、私は自室に三成くんを招き入れることになった。
三成くんは、私の手を取ると慣れない手つきで包帯を撒き出した。
私の指がみるみる分厚くなっていく。
…やっぱり、こうなるよね。
私は苦笑した。
でも、真剣な眼差しで私の為にこんなに一生懸命にされると…。
気づけば喜びの笑みに変わっていた。
「出来ました!」
…これで、いいのね?
私は自分の苦しそうな人差し指を眺める。
三成くんが満足そうなので、良しとしよう。
「ありがとう」
でも、これじゃあ針子の仕事は今日は無理そうだな。
今日は何しよう…そう思っていたら、視線を感じた。
三成くんが微笑みながら、私を見ていたのだ。
「…ん?何?」
「葉月様は美しいなと思いまして」
三成くんの澄んだ目の方がよっぽど美しい…っていうか、そんなこと言われたら照れる。
でも、三成くんは誰に対しても褒め言葉を言う人だし、ちょっと大袈裟なのだろう。
私は息をついた。
「ありがとう」
「…葉月様、私の言葉を信じてなさそうですね」
三成くんって、意外と目敏い。
彼は少し首を傾げながら、薄く笑って私を見ていた。
「私は、嘘は言いませんよ。本当にそう感じたから申したのです」
「でも、私は…そんなことないから。そんな風に思えない」
「なぜ、ですか?」
私は…あんまり自分が好きじゃない。
自分を好きになれない、そんな自分も好きじゃない。
私は溜息を吐いて、笑顔を作る。
「なんでかな」
「…葉月様」
三成くんの瞳が揺れた。
そんな悲しい顔をしないで欲しい。
私なんかのために。
私も自分に自信を持ちたい。
私にも
何か得意なことがあれば。
熱中できる何かがあれば。
誰にも負けないようなモノがあったら…。
違っていたのだろうか?
私はいつからこんなに自分に自信がないのだろう?
自分の無力を感じてばかりだ。
現代でも、此処にいても。
私は、誰かに選ばれたことがない。
能力でも。
色恋沙汰も。
「全部、好きです」…三成くんはそう言っていた。
あの猫みたいに、ありのままを受け入れて貰えたらどんなにいいか。