第27章 私は猫になりたい〜石田三成〜
猫のしっぽの先が時々、くねくねっと奇妙に動く感じとか。
ひなたぼっこをしている時の瞳の中が細くなる感じとか、
抱っこした時の柔らかさ温もり…
全部好きです、とあなたが言うから。
頷きながらも羨ましくなってしまった。
あなたに可愛がられている、あの猫が。
きっと、猫の方が一枚も二枚も上手に違いない。
この気持ちを悟られたのだろう。
ちょっと触ろうとした瞬間
私は猫に深く噛まれた。
痛いというより驚いて…
ただただ呆然としていると、
三成くんの方が慌てていた。
猫はその騒がしい様子に、ぴゅんと逃げて行った。
「あぁ!すみません。すみません。どうしましょう?」
「…大丈夫だよ。あっ」
三成くんは私の人差し指から血が滲んでいるのを見ると、躊躇なく自分の口の中に入れた。
私は声も出ない。
そんなこと、されたことないもの。
痛かったはずの手から違う熱を感じてしまい、私はそのまま動けなかった。
三成くんの口の中は温かくて、少し舌の感触もした。
どうしよう…この状況。
私は、三成くんの顔を見ようとしたら…
バチッと目が合ってしまい、私は固まった。
三成くんが目を逸らしてくれない。
…どうして、そんな目で私を見るの?
しばらく私たちは見つめ合っていたと思う。
「…どうかした?」
後ろから家康の声がして、パッと反射的に手を隠した。
「ちょっと、猫に噛まれちゃって…」
「見せてみて」
家康が私の少し濡れた指を見る。
まだ血が滲んでいた。
「結構深いね。消毒、しようか?」
「あっ…大丈夫。ありがとう」
「そう?じゃあ、何かあったら言って」
家康は少し疑わしそうに私たちを見ると、去って行った。
私は家康の有難い行為を断るしかなかった。
片方の手を三成くんに掴まれて、私は動けなかったのだ。
「あの…三成くん…」
「消毒、私にさせて下さい」
「いや、大丈夫だから」
私は両手を振って遠慮した。
でも、三成くんは納得いっていない顔をする。
「いけません。あなたには傷一つ、つけたくなかったのに…こんなことになって。私の責任です」
参ったな…。
三成くん、治療とか消毒とか得意には見えないし。
私は心の中で溜息をついた。