第26章 雨でも晴れていても〜明智光秀〜
「……と、なぜ言わせないんだ、お前は」
…え?
私は顔を上げた。
「こんな男のどこがそんなにいいんだ。お前のことは到底理解できないな」
光秀さんの眉が下がっている。
もう何もかも諦めたような笑顔だった。
「お前には、もっと明るい場所に連れて行ってくれる奴が似合いだ。それは…俺ではないだろう。俺がお前なら、そうする」
光秀さんと同じことを思っていたのだろうか、私は。
もしこれが本音なら、そうだ。
「本当に、お前は…物好きだな」
私の手を取り、優しく口付ける。
そうですか?
そうなのでしょうか?
私、結構普通の人間ですよ。
もう、雨が雪に変わっていた。
だから、こんなに寒かったのだろうか。
でも、今は寒くなかった。
横にあなたがいてくれるから。
そんな私の考えていることが悟られたのだろうか。
「せっかくだ。温まることでも、するか?」
そう言って光秀さんが私を抱きしめる。
「お前に秘密を教えよう…俺は雨は別に好きでも何でもない。お前と同じものが一つでも好きになりたかったんだ」
私の耳にそう囁かれ、また涙が溢れた。
私はもう、あなたが好きなら雨でも雪でもお日様の光りにもなりたいなんて言ったら、またあなたは笑うのでしょうね。
馬鹿な娘だと…。