第26章 雨でも晴れていても〜明智光秀〜
「……何のようだ」
あからさまに嫌な顔をされた気がした。
それとも、この顔は困った顔なのだろうか?
夜遅く、光秀さんの部屋を訪れた私は、何と言えば良いかわからなくなる。
「用がないなら…」
「あります」
「…どうした?」
優しい声で訪ねられ、緊張の糸が切れる。
目が潤んでくるのを感じ、唇を噛んだ。
「今夜だけ…私とい…」
「葉月…悪いが俺は…」
どうやら光秀さんは最後まで言わせてくれないみたいだ。
でも、私は言葉を続ける。
聞いてもらえなくても、知ってもらいたい。
「今夜だけ。今夜だけでいいんです。私…そうしたら、諦めますから。絶対、もう二度とこうやって来ませんから。光秀さんに迷惑かけないようにします。だから…」
私は、光秀さんの着物を掴んで頭を下げた。
「お願いです。一緒にいたいんです」
あなたと、今夜だけでいいから。
涙が頬をつたっていく。
泣きながらこんな風に言うのは反則だとわかっている。
光秀さんは、優しいから困らせたくはなかった。
「泣くな…。お前に泣かれるのは、得意じゃない」
私は下を向きながら、見なくても光秀さんの困り果てた顔が浮かぶ。
私は顔が上げれない。
私は振られる…きっと、それはもうすぐ。
「俺は、お前の気持ちには応えられない………」