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イケメン戦国<私だけの小さな恋の話>

第26章 雨でも晴れていても〜明智光秀〜 




「雨、好きなんです…私」

朝から雨が降っていた日、私は光秀さんに話しかけた。
光秀さんはふっと此方を見ると、ゆったりと笑った。

「そうか。俺もだ」

光秀さんと同じものが好き。
それがとても嬉しくて、私はその言葉を何度も心の中で反芻した。
共通点などまるでない。
私とは一番縁遠いだろう、この人。

でも、私はどうしようもなく…この人が好きだ。
明智光秀。
私の心をいつも掻き乱して去っていく人。

決して、振り向いてはくれない人。

私は知っている。
この人は太陽を求めている。
私みたいに雨のような湿っぽい女子ではなく、明るく照らしてくれる方を。
直感で、そう思った。

だから、私は何度も諦めようとした。
この気持ちはなかったことにしようと。
忘れようと。

その度に、光秀さんは私の前に表れて優しく名前を呼ぶのだ。

「葉月…」と。

狡いと思う。
決定的なことは何もしないのに、私にほんの少し期待をもたせる。
光秀さんのことだから、私の気持ちなんてお見通しなのかもしれない。
それなのに諦めさせてくれないなんて、酷い人だ。


男の人は、気持ちに応えられなくても、好きでいて欲しいものなのだろうか。
そうだとしたら、なんと自分本位な生き物なんだろう。
…でも、私もあの人に冷たくされたらとても辛い。
想像しただけで無理だから、表面上でも優しく意味深にしてくれた方が心穏やかでいられるのかもしれない。

それでも、この僅かな希望に縋りついたままなのも、私は苦しくなってきている。

あぁ、素直にあの人の胸に飛び込めたらどんなに良いか。
今日もそう思うだけで、日が暮れていく。






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