第25章 続・私、人妻です〜織田信長〜
「貴様…俺の持ち物を悪く言うなと前から言っているはずだが。まだ言うのか」
「す、すみません…」
私が縮こまると、信長様は「全く…」と呟く。
「だが、そういう所も気に入っている」
「そういう所?」
「俺が言わないと自分の良さに気づけない。そんな所だ」
そう言って、私の髪の毛を一束掴み口づけを落とす。
「手放したくなる、お前の気に入っている中の一つだ」
「他にも…あるんですか?」
私が食いつくと、信長様の瞳が楽しげに揺れる。
「知りたいか?」
「知りたいです」
「そうか…ならばな」
「…今宵、教えてやろう。ゆっくりとな」
信長様の只ならぬ色気に私は後ずさる。
「だめです。私には子どもたちの寝かしつけが…」
「その後で良い」
「また、子が増えてしまうかもしれませんよ?」
「良いではないか。また賑やかになる」
「…信長様は、お子が好きなのですね」
「そうだな…。お前が子を抱き、可愛がり、子を育てている姿が何より好ましく、愛おしく思うな」
そう言って、信長様が優しく微笑む。
どこか遠くに目線を送っている。
その姿をまるで、思い出しているかのような…
そんな表情だった。
私は感動してしまう。
そんな風に思っていてくれたなんて。
「日ノ本がそんな方ばかりだったら、女子は皆幸せでしょうね…」
「何を他人事のように言っている。葉月の話だぞ」
「はっ!そうでしたね」
本当に有り難いです。
身に余る光栄でございます。
「一緒に歳を重ねるのも幸せなことですね」
「…そうだな」
私の手を取り、信長様が答えてくれる。
私、幸せです。
果報者ですね。
無くしたモノより、得たものが多い…改めてそう思います。
それは、信長様だからだと思うのです。
他の方だったら、そんな風に考えて言ってはくれません。
私はこれからも、感謝を伝え、返していきますね。
信長様…。