第21章 私、人妻です〜織田信長〜
「葉月さん、結婚していたんだね」
私の部屋を訪れた佐助くんは、私の薬指の指輪を見ながら呟いた。
「…まあ、ね」
私は指輪をいじりながら答えた。
「初めて見た時、なんだか悲しそうに見えて…今にも消えちゃいそうな雰囲気だったから。結婚してると思わなかったよ」
私は苦笑いをした。
そうだ。
私は消えたかった。
ここから、この世界から。
そう思ったら、本当に消えていたんだ。
「現代に帰りたい…?」
佐助くんが気まずそうに聞いてくる。
「わからない」
私はそう答えるしかなかった。
帰っても仕方ないと思うし、ここにいても…何か出来るとは思えなかった。
「また、様子を見に来るから」
佐助くんはそう言い残して帰って行った。
私は溜息をつく。
「…これから、どうしようか」
信長様は、私にしばらく安土城にいることを許可してくれた。
毎日、好きなようにすればいいと。
私はただ、この自分の部屋でぼんやりしている。
何もする気力がなかった。
ずっと気持ち悪いし、頭が痛い。
あんなに勢い良く、この時代に飛ばされたせいだろうか…?