第21章 私、人妻です〜織田信長〜
「お茶でも飲むか?」
秀吉さんはこうやって私を時々誘ってくれる。
政宗は「お前は痩せ過ぎだから食え」と食事をいつも多めにくれる。
家康は顔色が悪いと心配してくれる。
三成くんはいつも微笑んで話しかけてくれる。
光秀さんとは…あまり会えていないけれど、目が合うと笑いかけてくれる。
私はここの武将たちにすっかり癒やされていた。
そして、一番私を救ってくれたのは信長様だった。
「貴様、また不正をしたな?」
「いいえー。信長様が弱いだけです」
私は時々、こうやって信長様とトランプをする。
お土産に買っていたトランプが役に立つとは思わなかった。
囲碁を教えて貰っても、ちんぷんかんぷんだった私は、自分の鞄からトランプを取り出し信長様に見せた。
「…これは…面白いな」
信長様の目がキラキラ輝いて、初めて玩具を見つけた小さな男の子のようで可愛かった。
七並べ、神経衰弱、ババ抜き…いろいろ遊ぶけれど、私たちが好きなのはスピードだった。
スピードなら、学生時代にやりまくっていたから負ける気はしない。
毎回、白熱の勝負だった。
負けた方が肩を揉むというしょうもない罰ゲームを信長様も受け、信長様に肩を揉んで貰えた時は優越感だった。
その分、神経衰弱は信長様が強すぎて勝負にならない。
「貴様、やる気があるのか」
「いや…覚えるの、苦手で」
「俺の勝ちだな」
数えなくても手持ちのカードの山が、信長様の方が多いのがわかる。
「負けました…。肩、揉みますか?」
「いや、こっちが良い」
そう言って、私の膝に寝転んだ。
私はびっくりして、カードを落としてしまった。
バサバサとカードが信長様の周りに散らばる。
「し、心臓にわるいです」
「気にするな」
…気にしますよ。
私はどんな顔をすれば良いのかわからず、困った顔しかできない。
信長様は私の前だと甘えん坊の男の子のようで、時々こうして戯れてくれる。
それが、とても嬉しかった。