第20章 罪な眼差し〜豊臣秀吉〜
<秀吉の部屋にて>
朝から秀吉の部屋に光秀が来ていた。
こんな日に限って光秀と二人で公務なんて、ついてねーな。
暫く無言で作業していたが、
「俺ってそんなに思わせぶりか?」
思わず、光秀にそんなことを溢してしまい後悔する。
光秀は片眉を上げた。
「いや…なんでもねぇ」
「なんだ、小娘に何か言われたか」
「いや…まあ…そんな感じだ」
光秀はふっと笑うと何も言わずに秀吉を見る。
秀吉はムッとして光秀を睨んだ。
「…なんだよ」
「随分と愛されてるではないか。良かったな」
「何がだよ」
「やきもちだろう。小娘らしくないな。相当我慢の限界だったのだろう。可哀想に」
「うっせーな。わかってるよ」
光秀は睨まれても涼しい顔をして言った。
「まあ、精々気をつけることだな。あの小娘を狙っている輩は多い」
「お前に言われたくねーよ」
光秀が少し意地悪そうに笑った。
「言ってやればいいだろう。お前が特別だと。お前ならそういうのは得意だろうが」
秀吉は、得意じゃねーよと呟く。
「俺が言うと嘘くさくねーか?いかにも言いそうな風貌過ぎて」
「ほう。お前、意外と客観性があるんだな」
「…馬鹿にしやがって」
「あの娘は純粋そのものだ。泣いて喜ぶぞ。そんなことは気にせず、言ってやれ」
「そう…か」
光秀はくくくと笑った。
「何、笑ってんだよ」
「お前と付き合うやつは大変だな。人たらしが過ぎる…。まあ、羨ましくもあるが」
「お前に言われても嬉しくねー」
「同感だな。俺もだ」
「本当にムカつくな、てめーは」
「…何やってるんだろう、あの二人」
家康が二人の仲睦まじい姿を引きながら見ていた。