第17章 やさしい獣〜伊達政宗〜
「はぁー」
朝、息を吐くと白くなる。
朝靄を見ながら、私はぼんやりと柱に身体を預けて座っていた。
まだ薄暗い。
少しずつ辺りが明るくなっていく。
私は片手を見ながら、手のひらを広げたり、閉じたりを繰り返す。
昨夜は夢だったのだろうか。
驚くほど、実感が湧かない。
「勝手に離れんなよ」
政宗が後ろから抱きすくめる。
私はその腕を触り、頬を寄せる。
政宗の匂いがした。
「…後悔してんのか?」
私は振り返って、政宗をしっかり見た。
政宗の少し痩けた頬にそっと触る。
頬から肩に、ゆっくり触って確かめる。
あぁ、夢じゃない。
政宗だ。
「…してないよ」
後悔なんて、しても無駄だもん。
私は、ずっとあなたが欲しかった。
欲しくて欲しくてたまらなかったから。
「じゃあ、なんで泣いてんだよ」
わからない。
怖いから。
あなたが離れていきそうで。
私は政宗の指を掴む。
「俺はどこにも行かねーよ」
政宗は、きつく抱きしめてくれた。
このまま抱きしめられたまま、消えたい。
幸せなまま。
やさしい獣に何もかも食べつくされて…