第17章 やさしい獣〜伊達政宗〜
乱暴にされたくて、つい挑発的なことも言いたくなる。
怒られて、なじられてみたいと。
私は、どうかしている。
こんなのは私らしくない。
でも、この熱に侵されてから私はずっと変だ。
つい、物欲しそうに政宗を見てしまう。
彼が気づかないわけがないのに。
「誘ってんのか?」
彼のちょっと雑な言い方が好き。
その無駄に色気がある声も。
すらっとした体格も。
ちょっと細めで撫で肩な肩も。
長い首も。
しっかり血管が浮き出る腕も…。
触れたくて触りたくて仕方ないのに、我慢をするのはしんどかった。
私は笑って誤魔化すしかない。
目は口ほどに物を言う。
この瞳が物語っていても、どうか気づかないふりをして。
そう願うしかなかった。
朝から雨が降っていた日、政宗が料理の仕方を教えてあげると私を誘った。
本当は嬉しくて飛びつきたいのに、自分を殺して側にいる。
でも、目眩がするほど嬉しかった。
政宗が人参や大根を丁寧に剥いて、切っていく。
野菜までもが羨ましくなる。
政宗に大事に触られ、丁寧に料理されていくのが。
料理というものに、こんなに目を奪われるなんて。
政宗の手の動きを見ていると、妙にときめいてしまう。
彼の動きは無駄がない。
美味しいモノは何でも食べてしまうのね。
そう思って見つめてしまう。
「なんでお前はそんなに俺を見んの?」
優しげに政宗に聞かれ、私は焦った。
「別に…」
そう答えるのが精一杯だった。
「ほら、味見してみろよ」
政宗は自分の指に調味料をつけ、私に差し出した。
当たり前のように差し出された指を私は口を開けて咥えようとしたら、政宗が自分の口の中に入れ、笑って私を見た。
私はきょとんとしていると、すぐさま私に口づけしてきた。
味噌とお酢、砂糖…?
一瞬、調味料の味がしたけれど、すぐ政宗の舌の感触しかしなくなった。
食べられる…。
私は気づいたら、政宗の身体を押して走って逃げていた。