第3章 壊れる音の閑話【土方裏夢】
明らかなおべんちゃらだったが、近藤は「そうなの?」と照れながら喜ぶ。
その様子を呆れ顔で一瞥した沖田は、困り顔でにこにこしているに改めて疑問をぶつけた。
「それにしても、何でアンタみたいな若い女が真選組に派遣されたんでい」
「え、あ、多分、独り身だからではないでしょうか」
「結婚してないって方が不用心だろ」
「ではなくて、所謂天涯孤独なので、いざという時に困らないんです。それに、そんなに若くもないですよ。もう二十四ですから」
の答えに、近藤は大げさに、土方と沖田は控えめにぎょっとする。
「えっ、うそ、さん二十四歳なの?!」
「はい。十八から大江戸警察に居るので、もう六年目ですね」
「俺より年上に見えねぇな。てっきり同じか年下かと思ってたぜ」
「沖田さんはお幾つなんですか?」
「二十歳」
沖田の答えに、は思わず息を飲んだ。まさか未成年に見られていたとはと、自分に自信がなくなる。
(確かに色気は無いけど……ん?)
自分を凝視している土方に気付いたは、何か気に障ることをしてしまったかと首を傾げた。
何故だかじっと見られていると、叱られる前の子どものような気分になってしまう。
(この人が直属の上司なのか……身が持たないかもなぁ)
この予感は遠からず当たることになるのだが、この時のはまだ、ぼんやりとした不安感だけを抱いていた。
黙り込んだを落ち込んでいると受け取ったのか、近藤が慌てて「でも」とフォローする。
「女性は若く見られる方が嬉しいって、すまいるの子たちも言ってたし」
「こいつの場合、特徴がなさ過ぎて決定的に色気が足らねぇだけって気もしやすがね。それに案外、男を知らねぇってからかもしれねぇですぜぃ」
そう言ってニヤリと笑った沖田の意図が解らず、は無意識に眉を顰めた。
「その顔、ますます年上には見えねぇや」
「総悟、あんまりさんを揶揄うんじゃありません。ごめんねさん。総悟はちょっとSッ気が強くて。悪い奴じゃないんだけど」
「え、あ、大丈夫です。私こそ、すみません」
近藤に頭を下げられ、の方が恐縮する。
(いい人だなぁ。近藤さんがトップなら、真選組でもがんばれそう)