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心憂し【銀魂裏夢】

第3章 壊れる音の閑話【土方裏夢】


「心得ております。宜しく御指導下さいませ」

感情の読めない表情に戻ったに苛立ちつつ、土方は低く「行くぞ」と行って部屋を出る。
は数瞬遅れて立ち上がると、慌てて土方の後を追った。
監察控室に着くと、中に居た山崎と吉村に声を掛けた土方はを紹介するでも無く居なくなってしまう。
置いて行かれたは、戸惑いつつも挨拶をして経緯を説明した。

「へぇ~。じゃあ、さんは変装が得意なんだ」
「得意、というか……元が地味なので、化粧で印象を変えやすいんです」
「化粧かぁ。俺も女装して潜入することが有るんだけど、化粧って苦手なんだよね。何かコツとかあるの?」
「コツ、ですか?」

山崎の問いに、は首を傾げて考える。色々やり方はあるが、言葉にするのは難しかった。

「そうですね……もし良ければ、少しお化粧をさせてもらっても?」
「俺に?」
「はい。試して頂くのが一番かと」
「うーん。あ、俺よりもさんがしてみてよ」

山崎の提案に、は首を傾げる。

「折角だから、君がどんな風に変わるか見てみたいな。吉村もそう思うだろ?」
「ああ。実力もわかるし、その方がいい」
「わかりました。では、机と……有れば大きめの鏡をお借りできますか」

二つ返事で了承した山崎は、使っていない文机と鏡を用意すると、鞄から化粧道具を取り出したの隣に陣取った。
はやや戸惑いながらも、自身に少し濃いめの化粧を施していく。
みるみる雰囲気を変えていくの姿に、黙って見ていた山崎と吉村は思わず感嘆した。

「はぁ~、凄いね。本当に別人みたいだ」
「確かにこれなら、同一人物だとは悟られにくいだろうな」
「次は清楚で大人しい美人って感じにしてみてよ。例えば……」

立ち上がり、ゴソゴソと押入を探った山崎は、一枚の写真を取り出してに渡す。

「こんな感じなんだけど、出来そうかな?」
「お綺麗な方ですね。同じようにとはいきませんが、やってみます」

闘争心に火がついたのか、は写真を受け取ると、じっくり眺めてから取り掛かった。
写真の人物は少し病弱な印象で、抜けるような白い肌と優しい目元が特徴的だ。色素の薄い髪は短く、細い首筋が一層強調されている。
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