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心憂し【銀魂裏夢】

第2章 壊れる音【土方裏夢】


「あの……どうかなさいましたか?」
『いや、何でもねぇ。なあ、もう少しだけ良いか?』
「はい。えっと、潜入捜査についてでしょうか」
『あー…、そうだな、うん』

妙に歯切れの悪い土方に、は不思議に思いつつ言葉の続きを待った。
たっぷりの沈黙の後、軽い咳払いをした土方から出た言葉は「今何してたんだ」という意外なもので、拍子抜けしたは頓狂な声を上げてしまう。

「へ、あ?」
『なんだそれ』

堪らず吹き出し笑い始めた電話の向こうの声に、は真っ赤になり俯きつつ「だって、驚いたんです」と小さく反論した。

『悪い、別に馬鹿にしてるわけじゃねぇよ。ただ……』
「ただ?」
『いや、なんでも。それより何してたんだ』
「え、あ、えっと、寝る用意をしてました。明日の任務に差支えがない様に早めに休もうと思って」
『そうか』

土方の淡白な反応に、は眉間に皺を寄せる。求められている答えが何なのかわからなかった。

「それで、この間山崎さんから頂いたアロマキャンドルを使ってみようかなって」
『アロマキャンドル?』
「はい。もうすぐ真選組に来て半年だからって、お祝い…というか、激励に頂いたんです」
『そうか、もう半年か』
「そうですね。だから、きっと――」

言いかけて、は開いた口をゆっくりと閉じる。その言葉の先は、きっと叶わない。

(本当なら、半年の予定だった。けど、未だに辞令が下りる気配がない。それはきっと、このまま真選組に居ろって事なんだろうな)

電話の向こうの相手から逃げる事は愚か、離れる事も許されないのだろうと思うと、自然と溜息が出た。

『どうした?』
「す、すみません。あの、夕飯を食べ過ぎたみたいで」
『なんだ、屯所で食って帰ってたのか』
「え、あ、はい」

土方の問いに、は一瞬疑問を浮かべる。何か、聞き逃してはいけないことがあったような気がした。
考え込んだせいで聴覚が疎かになり、土方に何度か名前を呼ばれてハッとする。

『――…おい、?』
「うあっ、はいっ、すみません」
『大丈夫か、お前』
「大丈夫です。すみません、あの、ね、眠くて」
『昨日の今日だしな。じゃあ今日は、ゆっくり休めよ』
「ありがとうございます。おやすみなさい」
『っ、ああ――おやすみ、』
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