第2章 壊れる音【土方裏夢】
薬の処方を終えて帰宅してからは、土方から連絡が来たらどうしようかと悩み過ごしいたが、吉村から「副長から連絡が入ることはない」と電話をもらって安心したは殆ど気絶するように眠りについた。
その為か、目が覚めてからは些か落ち着いており、いつものように準備をして出勤できている。
監察の控室に入ると、既に吉村と山崎が準備を始めており、は二人に挨拶をしてから吉村に昨日の礼を述べた。
「色々と、ありがとうございました。それから、申し訳ありませんでした」
「後は自分で何とかするように」
「はい」
何とか出来る気は全く無かったが、それでもこれ以上迷惑はかけられないと、諦めにも似た思いで微笑んだ。
暫く作業をしていると朝議の時間になり、山崎と吉村を見送ったは昨日の報告書に目を落とす。
「場所、時間、人数──よし、後は副長に決裁を……」
仕上がった報告書を土方宛の箱に入れ、戻って来た山崎と共に副長室に向かった。
廊下を並んで歩きながら、山崎は遠慮がちにに尋ねる。
「ちゃん、副長と何か有ったの?」
「え?」
「副長なんだけど、昨日は苛々してたのに今日は何か落ち込んでてさぁ……上の空って言うのかな。ちゃん、昨日帰る前に副長と話してたけど、何か知らないかなって」
「いえ、何も」
にこりと笑ったに、山崎は「そっかー、じゃあ沖田隊長絡みか」と、暢気に答えた。疑う事のない山崎に安堵しつつ、は昨日の失態を思い、土方に会うことを躊躇ってしまう。
(逃げたって、解決するわけじゃない。だったら、話をしないと。ああでも、昨日の今日はやっぱり無理……)
キリキリと胃が痛み、の眉間に皺が刻まれた。
「ちゃん、やっぱりまだ体調悪いんじゃないの?」
「いっ、いいえ。あの、えっと……大丈夫です」
「無理しちゃ駄目だよ。副長ってば自分は命令するだけで人使いが荒いから、辛い時はちゃんと辛いって言わなきゃわかんな──」
「誰の人使いが荒いって?」
背後から掛けられた声に、と山崎は慌てて振り返る。
「げ、副長」
「山崎ィ、俺の代わりに一日副長でもしてみるか?
もれなく総悟に付け狙われる権利も永久的につけてやらぁ」
「え、遠慮します」