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心憂し【銀魂裏夢】

第1章 壊れる音【土方夢】



土方視点。


今日はいい日だ。
仕事は順調だし、総悟は非番で出掛けていて、屯所に居ない。
ゆっくり仕事が出来ると思っていたら、監察のが掲示板を見上げて呆けていた。

「おい」
「はいっ!」
「うるせぇよ。普通に返事しろ」
「す、すみません」

謝りつつ見上げてくる表情はどこか強張っている。
まるで小動物のようだと思っていると、がゆっくり後退った。

「んだテメー、こっそり距離開けんじゃねぇよ」
「き、気のせいですよ。それより、何か緊急の任務でしょうか?」

明らかに不自然な笑顔に思わず舌打ちが出る。
コイツはいつまで経っても俺に慣れる気配がない。
他の隊士とはすっかり馴染んで交流を深めているようだが、俺と目が合うと顔を強張らせて硬直する。
だがそれも、数日の内に終わる筈だ。
この計画がうまくいけば。
不自然に笑うに「手を出せ」と指示すると、懐から取り出した紙切れをその掌にのせた。

「明後日の午後六時、この場所に来い。時間外手当は出るから安心しろ」
「はあ……」
「隊服で来るなよ」
「わかりました」
「今日は急ぎの任務はねぇから、一先ず待機だ」
「はい。では、控え室におりますので何か有ればお呼び下さい」

逃げるように居なくなったの背中を見送って、煙草に火をつける。

「うまいな」

思い通りに事が運んでいるからか、いつもの煙草が数倍うまく感じる。
山積みの書類でさえ苦に感じないのだから、随分だ。
暫く書類に目を通していると、頼んでいた書類が足らないことに気付き、監察の控室に行くために立ち上がる。
部屋の前まで来ると、と山崎が話している声が聞こえ、思わず聞き耳を立てた。内容までははっきり聞き取れないが、随分と盛り上がっていることだけは伝わってくる。

(俺以外が相手だと、随分と楽しそうに笑うな)

怒りとも哀愁ともとれる感情が湧き上がってきて、思わず舌打ちをした。
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