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心憂し【銀魂裏夢】

第2章 壊れる音【土方裏夢】


尽きる事の無い欲求が全身を支配し、満たされていた感情が綻んでいく。こうして無理矢理手に入れても駄目なのかと、我ながら呆れてしまった。
土方の手が止まった事に気付いたは、その表情を窺ってくすりと笑う。

「今度はトシさんが、渋い顔になってますよ」
「っ、……」
「折角、なんでしょう?」

の少し意地悪な言い方に、土方は少し驚いた後、ニヤリと笑った。

「生意気な口利く余裕が出て来たな」
「少しお腹が満たされたので。あ、お味噌汁飲んでみて下さい。お出汁しっかりで美味しかったです」
「……確かに、うまい」
「ね。屯所の食堂も美味しいですけど、たまにはこういうのも良いですよね」
「ああ、そうだな」

柔らかくなった土方の表情に、はこっそり胸をなで下ろす。

(良かった。不機嫌なのは、やっぱり恐い……ううん、私はずっと副長が恐い)

少し震える指先を隠すように笑顔を貼り付けた。せめて家に戻るまでは、この恐怖も思いも、僅かな変化も隠してしまおうと、ゆっくりお茶を流し込む。
表面上は和やかに食事を終わらせると、息つく間もなく部屋に戻り、隣室の状況を確認した。

「奴らは引き払ってるみてぇだな。、回収に行けるか?」
「こちらの店の方にご協力頂いて構いませんか?」
「ああ。真選組の事は伏せておけよ」
「はい。では、少し用意をしてきます」

は身だしなみを整えて着替えを済ませると、土方に部屋を引き払うよう頼んで廊下に出る。
暫く待って居ると客室係がやってきて、は嘘の理由を述べ、幾ばくかの金を渡して盗聴器を仕掛けた部屋に入り、素早くそれを回収した。

(一先ず任務完了。ここを出たら副長に連絡しないと)

ひと段落して気が緩んだは、疲れた様子でエレベーターに乗り込む。

(まずは屯所に帰って……いや、やっぱり着替えてからにさせてもらおう。何か色々気持ち悪いし)

溜息をついてエレベーターの表示を見上げると、途中で止まり、賑やかな人たちが乗り込んできた。
銀髪の青年とメガネの少年、赤髪の少女という目を引く三人組に、も思わず目をひかれる。

(目立つ三人組だなぁ。あれ、この人たちって……?)

記憶の端に引っかかり、は銀髪の青年を盗み見た。
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