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心憂し【銀魂裏夢】

第1章 壊れる音【土方夢】


二人分のお茶をいれ、引き継ぎがてら雑談に興じるのが日課になりつつあった。
山崎さんは副長のお気に入りなのか、重要任務を勤める事が多く、酷いときは一月以上姿を見なかった事さえある。

「お茶どうぞ。熱いので気を付けて下さいね」
「ありがとう。はー、疲れた体に沁みるなぁ」
「それは良かった。お茶菓子もありますよ」

チョコレートやクッキーの皿を出すと、山崎さんは「疲れた時は甘い物だよね」と、チョコレートを頬張った。

「随分お疲れですね。どんな任務だったんですか?」
「いつもの聞き込みと張り込みだったんだけど、万事屋の旦那とかち合っちゃってドタバタが2倍に……」
「万事屋の旦那?」
「あ、ちゃんは会ったこと無かったっけ。かぶき町にある万事屋銀ちゃんって店の旦那で、副長と相性最悪でさぁ~寄ると触るとトラブルになるんだよ。ちゃんも気を付けてね」

「万事屋と言えばね~」と続ける山崎さんの話に耳を傾けながら、程よい温度になったお茶をすする。
山崎さんの話が上手なのか、聞けば聞くほど万事屋の人達に会ってみたくなった。

「ってわけだから、ちゃんも万事屋絡みの事件の時は俺たちに頼ってくれたらいいから」
「はい。ところで山崎さん、報告書は--」
「山崎ぃ!テメェさっさと報告書上げやがれ!!」
「副長ォォオ!?」

完全にだらけていた山崎さんは、鬼の形相でやってきた土方副長に吹っ飛ばされる。

「何暢気に茶ァしばいてんだ!昼までに報告書出せっつっただろーが!!」
「スグ!今すぐやりますっ!」

慌てて事務机についた山崎さんは、猛スピードで筆を走らせる。

「副長、山崎さんを休憩に誘ったのは私なんです。急ぎの要件とは知らず、申し訳ありませんでした」
「誘ったのはお前でも、便乗したのはコイツだろ。つまり、山崎が悪い」

酷い。それでは山崎さんが可哀想だという一言が出掛かったが、ターゲットが自分になるのは嫌なので、軽く笑って「以後気を付けます」と誤魔化す。
やっぱりこの人は苦手かもしれないと思っていると、がっちりと手首を掴まれた。
出かかった悲鳴を飲み込む。

「っ、副長、何か?」
「ちょっと来い」
「え?」

そのまま引っ張られ、副長室まで連れて行かれた。
何か仕事が入ったのかと思い身構えるが、黙ったまま動かない。
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