第2章 壊れる音【土方裏夢】
理由がわからないは、戸惑い、混乱した。
は以前交際していた人物と性交渉を持ったことがある。
その相手とは、互いに初めてで、交際していた間に何度か行為に及んだが、満足している相手とは対照的に、はいつまで経っても慣れることがなく、満足したふりをしてやり過ごした。だからそれは、痛くて苦しくて、悲しいものだと思っていた。
(はず、なのに)
自ら想いを告げるほどに恋した人との行為はあれほど辛かったのに、わけが解らないままに触れられている今、どうしようもない程に気持ちいい。
「どうした?」
土方の問いに、は首を横に振った。目が覚めたばかりの時よりも体が動くようになってきている。それなのに、抵抗できなかった。
「ふ、くちょ……、んうっ」
弄られていた胸の先端に噛みつかれ、は体を震わせる。
「んっ、――呼び方」
「んッ……」
「何て呼ぶのか、もう忘れたのか?」
優しい問いかけに、の顔が青ざめた。混乱している頭で答えを探し、震える唇でどうにか答える。
「トシ…さん」
「正解だ。よくできたな、」
「んっ、あ、っっ」
主張する胸の先端を吸われて、の体がびくりと震えた。堪えるように眉を寄せ、唇を軽く噛んだの姿に、土方はほっとするように息を吐く。
が行為に慣れていないのだと実感して、安心したのだ。
何て醜い感情なのだろうか。
が汚れていない事を望みながら、をめちゃくちゃに汚してしまいたいと考えている。
白い肌に痕をつけ、所有印を刻み、逃れられないようにこの手の中に――
土方はの下腹部をゆったりと撫でさする。
(この奥に、俺の印を)
避妊なんてするつもりはない。だから、この日を選んだ。
確実にを孕ませる。孕まなかったとしても、の逃げる気力が無くなればそれでいい。
のショーツに指をかけた土方は、目を閉じて耐えているの額に口づけた。
それが、何の為だったのかはわからない。
震えるを安心させたかったのか、それとも、――
「っあ、トシさ……」
魘されたように名前を呼ばれ、土方はぺろりと自分の唇を舐める。