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心憂し【銀魂裏夢】

第2章 壊れる音【土方裏夢】


「山崎が言ってたんだよ。の恋人が隊士に居るらしいって」
「はぁ?!」

素っ頓狂な声を上げたに、土方は僅かに身を引く。

「恋愛なんて、してる余裕ありませんよ。ただでさえ、忙しいのに」
「そうか」
「そうですよ。それに……」

言いかけて、はその先の言葉を飲み込んだ。唐突な質問に思わず答えてしまっていたが、目の前に座っているのは上司だ。余計なことまで話す必要はない。

「それに、何だよ?」
「あ、いえ。今は、仕事が恋人なので」

誤魔化したに、土方はすうっと目を細めるがそれ以上は追及せず、ゆっくりと酒を流し込んだ。
ほっとしたは、用意されていた緑茶に口をつける。

(高級店だと、食事用のお茶も高級品なんだなぁ)

妙なことに感心しながら、は食事をすすめた。
殆どの皿が空になった頃、仲居が水菓子をもってやって来る。

「ごちそうさまでした。どれもとっても美味しかったです。ひ……トシさん、お酒のおかわり頂きますか?」
「ん。ああ、同じものを頼む」
「かしこまりました。奥様も、何かお飲み物をお持ちいたしましょうか」

一瞬、自分の事だとわからなかったはぱちぱちと何度か瞬きをしたのち、慌てて取り繕った。

「あ、あの、私はお茶で。あの、すみません」

狼狽え、頬を染めているに気付いた仲居は、微笑ましいとくすりと笑い「かしこまりました」と部屋を出て行く。

「びっ、くりしたぁ」
「何がだ?」
「いえ、まさか夫婦だと思われてるとは考えていなくて」
「こんな所に泊まるなんざ、それ以外考えられねぇだろ」
「泊まる?」

土方の発言には首を傾げた。何となく、聞き捨てならない一言だったような気がする。
食事を終えた土方は、優雅に煙草に火をつけてふかし始めた。

「あの、泊まるって――っ」

不意に、眩暈に襲われる。
倒れそうになり、机に手をつくが強烈な眠気にも似たそれは、容赦なくの体を蝕んだ。

「だめ、こんな……」

ぐらりと傾いたの体を、いつの間にか隣に来ていた土方が支える。

「大丈夫か?」
「だい、じょう……――」

すうっと意識を失ったに、土方は口元を歪めた。
何もかもが、計画通りだ。
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