第2章 雨のちトキメキ
「あなたは何故こちらに?」
『んー。結構手痛い恋愛をしてしまって。
田舎に来て癒されたくて。
まぁ、新しい恋愛が出来たら1番いいのでしょうけど、そうも行かなくて。
こっちに逃げてきちゃいました。』
少し感傷的になり過ぎたかもしれない。
ちょっといろいろ思い出してしまった。
でも、聞いて欲しかったのも事実だ。
そう思うと飲んでもないし、頼んでもないのに言葉がポロポロとこぼれ落ちる。
『私、オオサカ居ったんですよ。
でも、恋人が出来て、恋人の住むコウベに移り住んで、半同棲みたいになって、
そしたら9年来の私の友達が一緒に住むことなって。
恋人はちっとも愛情くれる訳でもないのに。3年付き合っててほぼほぼレスやし、
でも振り向いて欲しくて、かまって欲しくて、恋人が持ってた200万くらいあった借金も返して、それから..あ、ごめんなさい。ペラペラとしゃべってしまって。』
「それから...?」
優しく聞いてくるその声に、少し泣きそうになった。
『それから...私が出張してる最中に友達と恋人が浮気してました。
なーんてことないオチですよ。』
男運ないんです。私。と笑ってみせると、
「なんてことないはずないじゃないですか。
逃げるくらい辛かったのでしょう。
それは貴女にしか知りえない、痛みがあります。」
優しく手を握ってくれる彼に
ダメだ。お願い。優しくしないで。
私は今仕事をしているのだから。
涙を流す訳には行かない。
と思いながらも振り払うことなど出来なかった。