第13章 晴れのち思い出
出るまでが大変だった。
黒のポンチョを羽織るまでもパシャパシャ。
ピアスを付けるまでもパシャパシャ。
玄関でショートブーツを履くまでもパシャパシャ。
もちろん履いてからもパシャパシャ。
『幻太郎...撮りすぎでは?』
「いいえ。小生の想像力は現実には及ばないと言うことが判明しました。
想像よりもこんなに綺麗なんですよ。
絵から出てきたと言っても頷けます。
更に想像力を豊かにするにはもっと撮り溜めておかなければ。
あ、後ろ姿もいいですね。目線頂けますか?」
『おーい。戻ってこーい。』
「小生、作家故、想像力を働かせるために旅に出ることが、ままあるんです。」
『うん...?』
「もちろん、一緒に行きましょうね。」
『う、うん。』
「各地の着物店を回りましょう。あ、空き部屋を衣装部屋にしましょうか。好きなだけ買ってくださいね。大丈夫です。お代は小生持ちですから。
それが、100万しようと200万しようと気にしないで下さい。」
うん、これあかんやつや。
『は、早く行かんと夜なるで!』
と、やっと外に出れたわけだが...
『先にお茶行かん?』
とりあえず落ち着かせたいし、落ち着きたい...
なるほどな、盲目的になるとこがあるんやな。
心のメモに留めとこう。
そこから車で喫茶店に行き、
紅茶とケーキに舌鼓を打つ。
「すいません。取り乱してしまいましたね。」
『まぁ、喜んでくれたならいいよ(笑)』
少しは落ち着いてくれたようなので、
目当ての店に向かう。
かなり品数も増えて掘り出し物も多かったが、厳選に厳選を重ね、無事買うことが出来た。
ここからここまで全部下さい。と真顔で言う幻太郎にかなり焦ったが、
かなり面白い一面が見れてよかったなー。
帰宅する頃には日も落ち始めていた。
まだまだ楽しいことがあると思うと、疲れなんて感じないんだなと終始ご機嫌の彼を見ながら思うのだった。
次はどんな一面を見れるのかな...こうやって思い出が増えていくんやな...