第10章 雨のち嵐
そこからは結末は早かった。
一方的に通話を切られ、
それでも幻太郎はメッセージで詰めに詰めた。
[15分もせずそちらに到着しますよ♪]
[いや、すいませんでした。]
[いえいえ!別に手間でもないので、大丈夫ですよ(^^)v車ですぐなので★]
[本当にすいませんでした。二度と彼女とは関わらないので。]
[そんなこと言わずに♪小生に勝てたら、ハクがつきますよ!]
[勘弁してください!]
[謙遜しなくともよいではないですか!
小生は中王区のラップバトルで一度優勝したくらいですのでm(_ _)m
地元では負けたことないなんてすごいじゃないですかー!]
[思ったよりも早く到着しましたねー?]
[どのような服装でしょうか?]
[おや?どうかなされたので?]
[既読ついてるのに、お返事ないの、ゲンチャロさみし(>_<。)]
[ま、嘘ですけどね。そちらには行ってませんのでご安心を。二度と関わらないでくださいね。]
[...はい。]
[返事に覇気が感じられませんねぇ。関わったらそうですね。ラップバトルの練習相手にでもなってもらいましょうかねぇ。]
[はい!すみませんでした!!]
あまりの容赦のなさに、
あんなに関わりたくないと思った元彼の肩を叩いてやりたくなるくらいには同情してしまった。
「終わりましたよ!」
『う、うん。ありがとう。』
「ルカの笑顔が見れるのなら、これくらいやって当然です。」
『嘘でも、結婚前提って言うてくれて嬉しかった。』
「前にも言ったとは思いますが...」
『ん?..わっ!!』
急に抱きしめられ、びっくりしていると
羽のように優しい声が上から降り注いだ。
「貴女には嘘はつきません。
即ち、貴女に関することでも、嘘はつきません。」
頭を撫でられ、あまりの幸福に目を閉じる。
『そうだったね。』
幸せすぎて怖いという感情は、今後もなくしたくない。
なくしてしまうと、当たり前になってしまう気がするから。
こんな柔らかで優しい、奇跡のような時間を。