第8章 晴れのち欲望
「気持ちのいいところですねぇ!
いろんなイメージが湧きそうです。」
そう言って、手を広げ風を受け止める幻太郎、
各々、好きに行動する帝統くんと乱数くんを見て
今日も自由だなと微笑んだ。
とても新鮮な気持ちになる。
恋人とこんな風にどこかに連れてきてもらうこと自体、実は初めてなのだ。
物思いにふけていると
「どうかしました?」
と声が聞こえた。
『こうやって恋人にどこかに連れて行ってもらうことが初めてやから..嬉しいなーって。』
「初めて?」
『うん。ここに行きたいけど、お金ないから、連れて行けってことはよくあったよ。』
少し笑いながら言うと
幻太郎は少しムッとした。
「こういうこと言うのは良くないことはわかっているんですが、
殺したくなりますね。」
爽やかな風に乗って物騒な言葉が聞こえる。
『でも、幻太郎が初めてやで?』
「それは悪い気はしません。」
キッパリと即答する彼に笑みを零せば、
ソフトクリーム食おうぜ!!
と帝統くんが走ってきた。
『その前に一服していい?』
「俺にも1本くれよ!」
帝統くんに1本渡し
喫煙所に向かう。
幻太郎は乱数の所に居ますね。とはしゃいでる乱数くんを落ち着かせにいく。
「幻太郎とは遠距離になるのか?」
『ううん。引っ越して来いってさ。』
「うおっ!まじか!」
幻太郎の意外な独占欲に
面白いことを聞いたと言わんばかりに
笑う帝統くん。
『帝統くんは幻太郎とは長いん?』
「帝統でいいぜ?そうさなー、幻太郎も乱数もそんなに付き合いは長くねぇけど、
大事なダチだ。もちろんルカさんもな!」
『ルカでええよ?友達かー。嬉しい。ありがとう!』
呼び捨てでいいと言ったのだが、
さん付けの方がしっくりくると言って、
呼びやすいならと言い、
たわいもない話で盛り上がる。
乱数くんと幻太郎のとこに向かい、ソフトクリームを買う。
帝統と呼んでいるのを聞いた乱数くんが
良いなー!僕も友達なんだからと、
乱数呼びになった。
前食べたときも美味しかったけど、
恋人と友達と食べるソフトクリームは
もっと美味しく感じた。