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雨のち恋

第5章 晴れのち月


宿泊しているという宿に着いてからは、
もう用意済みというように
予め部屋を別に取られているという、
乱数さんの計画が垣間見えた。
あらかた飲みに行くというのはほんの少しの時間で、すぐに宿に帰って部屋をとったのだろう。
策士や。可愛い顔して、とんだ策士や。

フロントで少し裏返った声で顔を赤くしながら
「え!?」という彼に思わず笑ってしまった。

そして、部屋の中でぶすくれて座っている彼の頭を優しく撫でた。
そうしたとこで、ハッとしたのだ。
ピタリと止まった手に
彼はどうかしたのですかと見つめた。

『遠距離になるなと思って...』

短く、
あぁ。と答えた幻太郎の声は落ち着いていた。

「引越しの手伝い致しますよ。」

しれっと答えた彼は
声質とは裏腹に
意外にも独占欲が強いのかもしれない。

『毎日美味しいご飯作るわね。』

満足気に笑った彼に、
これからの時間は彼のためだけに捧げようと思った。


ある程度寝支度を整えれば、
すでに敷かれている布団に寝転ぶ。
恥ずかしげに幻太郎は、おずおずと腕を伸ばした。
腕の上に頭を乗せれば、所謂腕枕の体制になるわけで、
暗い部屋でも真っ赤なのがわかる彼の顔を見て愛おしさが湧いてくる。
華奢な見た目に騙されることなかれ。
意外と厚みのある胸板にきゅっと引っ付く。
いい匂いだなー。とぼんやりと考えているうちに
今日の情報を処理するのに疲れきった頭と体は
睡眠を欲した。
また明日。と優しい声と背中を撫でる手に
幸せに溢れたまま意識を手放した。
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