第5章 晴れのち月
少しして離れた唇。
感触がまだ抜けない。
きっと、情けないくらいに顔が赤い。
自分に負けず劣らず顔が赤い幻太郎さんに驚いた。
『幻太郎さんも顔赤い。』
気まずそうに少し目を逸らし
「初めて...ですからね...
キスも...恋も...」
格好を付けたつもりだったんですが、
格好付かないですねとさらに赤くした。
ただただ私は幻太郎さんに驚くばかり。
え?待って?初めて?
意味合いは違うが
初めての女性が嬉しいという男性の気持ち、大いにわかる!と頷きたくなった。
先程までカッコイイと思っていた彼が、
年下だと言うことを思い出し、
一気に可愛い!意地悪したい!!というような雰囲気台無しなことを思ってしまった。
『嬉しいよ。幻太郎。』
さらにカァッと赤くなった彼に
私からキスをする。
帰ろっか!っと手を繋ぎ、
帰る道は涙で揺らいだ景色とは違って、
暖かく揺らめいているように感じた。