第5章 晴れのち月
頑張りすぎましたねと言われ、
ここに認めてくれる人がいた。
それだけで充分だったのだ。
それでいい。それ以上は求めない。
ほんとに?ほんとに求めない??
好きだと言われて、
それ以上は求めないからなんて
仏みたいな心を持ち合わせてるほど
できた人間には、とてもじゃないけど私にはなれそうにはないよ。
ならば、自分の中で止まった時を
動かそう。
息をしよう。
喋り方なら今思い出したよ。
『私も、好きです。』
「涙、止まりましたね。」
『でもね、困ったことに嬉しすぎてまた涙が出そうです。』
そういうと彼は愛しそうに微笑みながら
「嬉し涙なら流していいですよ。」
そして、続けてこう言った。
「小生は貴女を嬉し涙でしか、泣かせるつもりはないですよ。」
作家とは、みんなこんなにロマンチックなのだろうか?
そしたら、この言葉は伝わるだろうか?
『憎らしくて、愛おしいです。』
「そこまで思ってくれてるのは、嬉しい限りですね。
貴女もなかなかの詩人ですね。」
ふふっと笑って空を見上げる彼は
空から降ってきたのではと錯覚を起こしそうになるほどに美しかった。
「月が綺麗ですね。」
『ずっと一緒に月を見てくれますか』
「えぇ。明日も明後日もずっと、月は綺麗ですから。」
そう言って宝石の様な瞳が私を捉えた。
その翡翠の瞳に吸い込まれて言ったと同時に唇が重なる。
魔法にかけられたみたいに、目を閉じれないまま、
聞こえるのは風の音。
鼓動の音。