第5章 晴れのち月
星空の下で2人きり。
まるで2人のためだけに与えられた世界のように、
この景色は特別に見えた。
自分たちの為だけに
星たちが見守っているのかもしれない。
自分たちの為だけに
漁船達が光っているのかもしれない。
自分たちの為だけに
そう錯覚を起こすほどに
この景色は綺麗に見えた。
彼の好きと言う言葉に
流れていた涙がピタリと止まり
時が止まった。
息が止まった。
喋り方を忘れてしまった。
好きという言葉の意味がなんだったのかすら、
忘れてしまった。
だって、どうして、でも、なんで?
ネガティブな様な言葉は
決してネガティブになりたくて生まれてきた言葉ではない。
でも、なんて絞り出して言葉を伝えればいいのかすらもわからない。