第4章 雨のち思い出
-幻太郎side
初めて見た時から、柄にもなく運命めいたものを感じていた。
所謂、一目惚れという
今までの自分なら得体の知れないものだった。
何度か恋愛小説は書いたことはあったが、
一目惚れという感覚がわからない分、書くのは避けていた。
雷に打たれたような、電気が走るような、ビビッときたなど話には聞いた事があるという程度だ。
実際、自分が体験してみると
息が止まったような、心の臓が脈打つような、出会いがスローモーションに見えるような。
と言う、一見、何とも病人のようだ。
乱数の行動に合わせてると、
いつの間にやらBARへ、
いつの間にやらドライブへ。
顔に出てないだろうか。耳は赤くなっているかもしれない。
隠すのに精一杯だ。
過去の思い出をなぞる彼女に、
過去の思い出の登場人物に嫉妬さえ覚えた。
本当につまらない男だ。
しかし、誰もいないこの場所で、
こんな表情を見せてくれているのは自分にだけ。
むしろ、今までで自分にだけなのでは?
少し優越感に浸りそうになったが、
言葉に詰まった彼女を見て
全てまでとは言わずとも悲しみが感染してしまった。
だって..から先、少しでも気持ちが軽くなればと
抱き寄せた。
彼女は傷つきながらも、頑張ってきた。
いや、頑張りすぎてしまった。
誰からも認められないという彼女の過去は、
どれだけ彼女を孤独にしたのであろうか。
過去の彼女を現在の自分が認めたら、
未来、2人で笑い合うことができるだろうか。
こんな状況で言うのはずるいかもしれない。
それでも...
「好きです。」
男の強欲が口に出た。
自分ならそんな思いさせない。
自分ならそんな頑張らせたりしない。
自分なら、自分なら。
好きですの一言にそれだけの思いを詰め込んだ。