第4章 雨のち思い出
『あそこの温泉街にはソープランドがあるんですよ。
私ね、前の彼に売られたんです。』
過去を嘲笑うように
私は陳腐なノンフィクションの私の物語を読んだ。
振り向いて欲しかった。
ただただ、振り向いて欲しかった。
彼のために借金を返済して、
それでも愛情は易々とはくれなかった。
付き合って3・4年だったけど、
片手で数えるくらいしか抱いてくれなかった。
欲しいものを買ってあげて、食べたいものは何だって作ったし、連れていったし、
振り向いてくれるならと。
周りも何も言わなかった。
だから、普通なんだと思ってた。
私の貯金が底を尽きたら、
行ってらっしゃいとキスをして、送り出された。
売られた。なんて表現は違うかもしれない。
でも、今思えばそうだったんだろうなと思ってしまった。
私があそこに働きに出てる間に、
長年の友達とそういう関係になってたんだから
もう、笑うしかない。
理由はヤキモチ妬かせたかったから。