第4章 雨のち思い出
ため息が出るくらいに美しいのは、
星空でも、街並みでもなくて、
それらを映し出す貴方の瞳だと思った。
宛もなく走らせた車は
所謂、夜景スポットと呼ばれる所に着いていた。
都会の夜景に比べて
田舎の夜景は明かりもまばらだ。
それでも1番美しいと思えた。
海も、星空も、街並みも、
今の私には特別な世界に思えてしまう。
「海の上にあるあのたくさんの船は漁船ですよね?」
明るく光を放つ漁船たちを指さす。
『あれは、イカ釣り漁船ですね。今はイカが旬ですからね。もう少し早い時間だと岸辺にたくさんたむろってるんです。』
「なるほど。イカ釣り漁船が夜景向きだと言うのも中々面白いですね。
あちら側に見えるのは?」
赤や青、紫や黄色。鮮やかな光が集まった箇所を指さす。
『ちょうど幻太郎さんが泊まってるらへんの温泉街ですね。番傘に灯りを照らしたり、あとは提灯とか!
あの辺には足湯もあるんですよ。
散歩コースにもなってますね。』
「詳しいんですね。」
『あそこらへんには、とてもお世話になりましたから。』
「お世話、ですか?」
また恋愛思い出話になってしまいそうだ。と口を噤んだ。
「先程のBARでのお話。聞かせていただけますか?」
『つまらない、と思うかもしれません。』
「思わないですよ。」
今見えてるだけでも自分にとっては広い世界のこの場所は、
この人は、受け止めてくれるだろうか。