第6章 限界プラトニック!【クロウリー】
「……っ」
……今なら、いいんじゃない?
心の奥の深いところで、今だ今だと騒いでいる何かがいる。
「…っ!?」
私は彼のネクタイを掴み、思い切り引き寄せた。
勢いに任せて重なる唇、高鳴る鼓動。
魔法もかかっていないのにこんな大胆な行動に出られるなんて、自分でも思っていなかった。
クロウリー先生とのキス…一瞬だけど、一生のように長く感じた。
唇の繋がりを解き、彼の逞しい胸板からゆっくり離れて目を合わせる。
「…くん、なんの真似ですか」
「……わかってますよ。すみませんでした。」
私があれだけ勇気をだしてキスしたというのに、顔色ひとつ変わらないなんて。
学園長にとってはこんなことももう慣れっこなの…?
嗚呼、ダメだなあ。このままじゃ傷つくとわかっていたのに。
「これが最初で最後のキスにします」
「………」
私がそう告げる頃には、ティーポットの中身は空になっていた。
…そろそろ夜も大分更けてきたし、茶会はお開きにしよう。
空いたティーカップを下げようと手を伸ばした。
___ガシッ__
その手は、学園長によって止められてしまった。
「…まだ、終わっていませんよ。」
「え、まだ飲むんですか______」
最後まで言い終わらないうちに、ふわりと宙に浮く身体。
我に返って、学園長にお姫様抱っこされていることに気づいた。
刹那、至近距離に見える学園長の仮面の下_____
___再び、唇が重なった。
「っ!?…っがくえんちょ…っんぅ…ふぁ…っ」
「…ん…っ」
先程のような触れるだけのそれとは違って、優しく噛み付くようなキス。
予想外の行動に動揺が隠せず、柄にも合わずに逃げ腰になってしまった。
「…おや…?どうして逃げようとするんです?」
"誘ってきたのは、君の方じゃありませんか"
そのまま隣室に連れ込まれ、ベッドに放り投げられる。
彼はベッドを大きく軋ませながら私に覆い被さった。
「馬鹿ですねぇ君は。私は貴方のためにずっと我慢していたんですよ?…くん」
ねっとりと艶めかしい視線に、声が出せない。
…はぁ、なんと美しい表情。
全てを自分のものにしたい。
ねぇ学園長…お願い。
…生徒と教師などという壁は、もはや今夜の私たちには関係ないのだから。