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【ツイステ】アナタのトリコ。【短編集】

第6章 限界プラトニック!【クロウリー】




学園長から、私はどんなふうに見えているんだろう。

紅茶を飲んでいるだけで悔しいくらい絵になる、彼の美しい横顔を眺めていたら、不意にそんな疑問が湧いた。

…ただの学生
いつも騒ぎを引き起こす問題児
気難しい生徒たちを扱いこなす猛獣使い…

ざっとこんなところだろうか。

きっと彼が私のことを1人の女として見てくれることは無い。
切ないなあ、私はこんなに好きなのに。



「…学園長」
「はい、どうしました」

「私が元の世界に帰る方法、見つけましたか?」
「ッ!?…ぇ、いや、ちゃんと探していますよ!」

慌てたのだろうか。
彼は飲みかけのティーカップをテーブルに置き、立ち上がる。
レースカーテンから零れる月の光に当たりながら、私に意地悪な質問をした。


「…君は、早く帰りたいですか。元の世界へ。」

学園長から向けられる、いつもより少しだけ鋭い目付き。


「…そりゃ、帰りたくなる時もありますよ。」

彼はその答えに驚いたような顔をして振り返った。
私の目を見つめたまま何も言わない。


先に沈黙を破ったのは、彼だった。


「…てっきり、私と一緒に居られるなら帰りたくないとか、そのようなことを言うかと思っていましたよ」
「…ふふ、前ならそう言っていたかもしれないです」


ティーカップの底に薄く残され、すっかり冷めきってしまった紅茶を飲み干す。

「…だって結局、私がどれだけここに居たいと望んでも、いつかはお別れしなきゃいけないでしょ」

返すことが思いつかないのか、彼は私から目線を逸らして月を眺め始めた。

「不思議ですね…君に『元の世界に帰りたい』と言われて寂しがっている自分がいます」
「…え?」

一瞬、時が止まったように感じた。

学園長がそんなことを言うなんて、明日頭に雷でも落ちてくるんじゃないかってくらい珍しいことだ。

…嬉しい。

私は未だ背を向ける彼に近づいて、後ろから思い切り抱きついた。

「…はぁ…何をしているんです」
「少しだけ…今だけこのままで居させてください」

いつもなら私のお願いなんてちっとも聞き入れてくれないけれど、今夜は違うみたいだ。
腰にまわした腕に、優しくて大きな彼の手が添えられた。

「…こっち、向いて」
「……」

私の方に、ゆっくりと振り返る。
月明かりに背を向ける彼はまた、妖艶な雰囲気で私を酔わせた。

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