第4章 初恋ファシネーション!【ジェイド】
それから先生とは世間話をして、美味しいお菓子を食べさせてもらって、あとはもう遅いので帰れと言われた。
…うん、元々なんの用で呼ばれたのか気になって眠れなくなるんだけど。
ふと窓から外を見ると、もう薄暗く雲がかかっていたので、はやくオンボロ寮に戻ってグリムにご飯をあげなければいけない。
「…クルーウェル先生、今日はありがとうございました」
「明日から気を引き締めて頑張りたまえ、仔犬」
大きな手で頭を撫でられる。
…先生の手は、すごく暖かかった。
「わーーーっ!!雨!!!」
鏡舎からオンボロ寮に行ったまではいいものの、門からロビーまではかなり距離がある。
スクールバッグを頭に当てて全力疾走。
オマケに強風で、もちろん雨なんて防げるはずもなくずぶ濡れになってしまった。
「…あれ、扉の前に人影……??」
傘を差し、私よりもずぶ濡れになっているのに一向に帰る気配がない。
…私になにか用事があるのかな?
なんだか申し訳なくてさらに足早に向かうと、それはジェイド先輩だった。
「わわっジェイド先輩…っ!!」
「…申し訳ありません、さん…ご迷惑でしたか?」
「そんなことないですっ!!とにかく早く入ってください、身体冷えちゃいます!」
『僕は平気です』と軽く流されたけれど、いくら人間じゃないから平気とはいえ、このまま寒そうにさせておくわけにはいかない。
私はジェイド先輩を、ヒーターも毛布もタオルも完備されてある自室に連れていった。
オンボロ寮なだけあって、普段使っている部屋以外は掃除も途中だから全く使えないのだ。
「…本当に、申し訳ございません。留守をわかっていながらも押しかけてしまいました」
「全然大丈夫ですよ!」
「店内に貴方の忘れ物を見つけたので、届けに」
「わざわざありがとうございます」
明日学園で会った時に渡すのでも良かったのに、ジェイド先輩は真面目だなぁ。
ほんとにこういう所はフロイド先輩と真反対な性格してるよね。
…そういえば今日はフロイド先輩に1度も会っていない。
"__あ♡…ッ、小エビちゃ…♡♡__"
「____っ」
思い起こされる、あの放課後の出来事。
「…今日、フロイド先輩はどうでしたか…?」
もう忘れようと思っていたのに、不意に聞いてしまった。