第11章 愛 2
いくら俺でも、スープを温めることくらいはできる。
……うまそ
好物のアサリを多めによそい、ついでに冷蔵庫から缶ビールをひとつ取り出した。
プシっとプルを鳴らし、冷たいそれを流し込む。
続いて、クラムチャウダーをひとくち。
「……うま」
その香りと味に、思わず口走ったら、
「……よかった」
ソファーからかすれた声がして顔をあげた。
「……おかえり……翔くん」
潤が、体をおこしながら、目を擦ってる。
「ただいま。ごめん、起こしたか」
「ううん。むしろ起きてようと思ってたのに、ごめん……寝てた……」
そのぼんやりした口調に、ほんの少しの違和感を感じる。
潤は、クラムチャウダーに手をつけてる俺を見てふわりと笑う。
「……美味しい?」
「ああ、うん。うまいよ。ありがとうな」
「よかった。温めれたんだね」
「……おまえ、失礼だぞ」
からかう声に笑いながら、俺は静かに席をたち、潤の傍らに立つ。
「…………?なに?」
……クロだな
とろりとした目に、微笑み、俺は潤の額に手のひらをおいた。
潤は一瞬、逃げる仕草をしたが、俺の表情を見てあきらめたみたいだった。
手のひらから伝わる熱さに、俺は眉をひそめる。
……おいおい
「これ、測ったのか」
「……大丈夫だよ」
「大丈夫じゃねぇだろ」
「翔くんの顔みたら治った」
「嘘つけ」
俺は吐息をついて、見上げる潤の頬を両手で包んだ。