第9章 温
炭水化物は極力控えてるけれど、これはご飯が進む。
ピカピカの米と、生姜焼の黄金の組み合わせに、俺は舌鼓をうち、たちまち完食した。
箸をおいて、手をあわせる。
「……ご馳走さま。すごくうまかった」
「……うん」
「……?」
俺は、すごく褒めたつもりだけど。
食べはじめの頃に比べて、なんだか、おとなしくなった翔くんに、首を捻る。
「……どうしたの?」
すると、翔くんは、ハッとしたように我に返り、ううん、と首を振った。
「……なんか。嬉しいな、って思って」
「……何が?」
「自分がつくったものを美味しいと言って、食べてもらえるのって……すごく嬉しいんだな」
「…………」
「お前が、よく、俺の食べる顔が好きだって言ってくれるけど……それが分かる気がするよ」
そういって、ふわりと笑う。
「…………」
肩のずれたエプロンで、そんな可愛らしいことを言ってくれるなんて、たまんない。反則じゃん……。
俺は、ゆっくり立ち上がり、翔くんのそばにしゃがんだ。
「……すっげーベタなこといってい?」
「…………うん」
翔くんは警戒するように、怪訝な顔になった。
俺は、かまわずに、続けた。
ここから先は、拒否されようが、俺は気にせずに突っ走るよ。
「デザート……くれる?」
「…………?……ねえよ、そんなもん」
「……あるよ」
言って、下から掬うように口づけた。