第8章 祝
皿にのせるのも一苦労するほどの、ゴージャスモンブラン。
まるで蕎麦のように細く繊細なクリームが、見た目にも美しい。
翔くんは、にっこり笑った。
「入所25周年、おめでとう、潤」
「……ありがとう」
いい香りのするコーヒーを乾杯のように少しあげて、
二人で一口。
それから、フォークでクリームを口に運んだ。
「美味しい…!」
「さすが行列のできる店だね」
溶けるようなクリームに、舌鼓をうつ。
俺はもぐもぐ口を動かす翔くんをみつめ、あったかい気持ちになった。
実際に並んだのはマネージャーくんとはいえ。
美味しい店をリサーチし、段取りをたて、マネージャーを店に向かわせ、俺の好物をゲットして……こうして祝ってくれた。
なんて素敵な人だろう。
「翔くん」
「ん?」
「ありがとう……」
「うんうん」
「……愛してるよ」
「……っ……けほっ……けほっ」
盛大にむせた翔くんに、あわてて水をとりにゆく。