第8章 祝
Jun
映画やら、CMやら。
とっくに仕事は始めてるけど、いまだメディアへの露出は、他のメンバーに比べて圧倒的に少ない。
……なのに
「ファンの子ってすごいよな」
画面をスクロールしながら呟くと、
「ありがたいね」
翔くんは穏やかに微笑んだ。
俺の入所日がツイッターのトレンドワードに入る日が来るなんて、かつての自分には想像もつかないことだろう。
俺は、こそばゆく感じながら、スマホを置く。
別に、自分で祝うつもりなんか、さらさらなかったけど、翔くんが仕事帰りに、ケーキを買ってきてくれた。
自分のことのようにうきうきしながら、ほら、と、箱を見せられて、俺は笑ってしまった。
ファンの子に祝ってもらうのももちろんだけど、俺にとったら、翔くんが祝おうとしてくれてるのが、最高にうれしい。
俺は、とっておきの豆をひき、コーヒーの準備をした。
もう箱からして豪華で。
翔くんは得意そうな顔で、待ちきれないのか、それを開いてみせた。
「じゃーん」
「……お。モンブラン!」
箱の中身は、番組でしかみたことのないような豪華な栗のケーキ。
金箔までのってるあたり、ゴージャス極まりなくて。
「これさ、並ばないと買えないやつなんだけどさ」
「……並んだの?」
「……それはさすがに無理だから、マネくんに頼んだ」
「ふふっ……それは悪いことしたね」
お人好しの翔くんのマネージャー。
ついにスイーツまで買わされるようになったのか。