第5章 愛
合鍵は持ってるが、中に本人がいるときは、一応インターホンを鳴らす。
嬉しいんだか不安なんだかよくわからない気持ちで、しばらく立っていると、ほどなくして、ガチャリと扉があいた。
「おかえり。翔くん」
部屋着姿の潤がでてきて、ふわりと微笑んでくれる。
いつものその笑顔に、無意識に緊張していた体が緩んだのがわかった。
「ただいま……って、なに?なんかあった?」
「うん。まぁ、入って」
「何が……」
いいかけて、口をつぐんだ。
広い三和土に、みたことのある靴が三足。
スニーカーが二足と……一足はサンダル。
え、これ。
かつての日常にあたりまえにあった気配。
思わず潤を仰ぎ見た。
潤は、ニヤッと笑って、軽く頷いた。
俺は、履いてたスニーカーを乱暴に脱いで、早足で廊下を抜け、奥のリビングに飛び込んだ。
とたんパーンという破裂音。
「ぅおっ」
咄嗟に顔をかばったら、ヒラヒラと頭の上になにかが落ちてきた。
おそるおそる腕をおろすと。
「翔ちゃん、お誕生日おめでとう―!!」
とてもとてもよく知る男たちの満面の笑みと、クラッカーから吐き出された、たくさんの紙テープで、俺は盛大に迎えられた。