第5章 愛
「俺んちじゃねぇじゃん」
冗談ぽく小さく突っ込んだら、マネージャーが首をひねった。
「……あれ?でも、松本さんから電話があって、今日は櫻井さんをこちらに案内するようにって言われたんですけど」
「……え?」
聞いてない。
「じゅ……いや、松潤は、他になんか言ってた?」
「いいえ……あの、まずかったですか?」
俺の様子に、マネージャーが不安そうな顔で慌て出したから、俺は、いや、と制した。
「心当たりあるからその件だと思う。ありがと」
「ほんとですか……よかった」
胸をなでおろしてるマネージャーに微笑みかけながら、俺は内心、動揺してた。
心当たりなんか嘘だった。
そりゃ、会えるのは嬉しいけど、潤の性格上、会いたいなら俺に直接言ってくる。
どうしたんだろう。
こっそりスマホを取り出して、潤とのトークルームを表示させた。
『お疲れ。なんかあった?』
手早くうちこむと、ものの数秒で返信があった。
『ちょっとね。今どこ?』
『おまえんちの近く』
『OK。そのままあがってきて?』
『どーゆーこと?』
『来れば分かる』
分かるって……なにがだよ。
疑問が尽きることはなかったが、車がハザードをたいて減速し始めたから、俺はそれ以上を入力するのをあきらめて、スマホをバッグに放り込んだ。