第1章 くもり所により快晴
…マズい!やらかした!
固まってしまっている東堂先輩に失礼なことをしてしまったと気付けば慌てて頭を下げる。
「すみません私!ファンのこと大切にされてる東堂先輩凄いと思います!」
「あ、ああ…ファンを大切にするのは当然のことだ!オレが山神で居続けられるのは、いつも声援を送ってくれるファンの子たちのおかげだからな!」
「流石東堂様…!ファンとしても益々応援しなきゃって思えますね!」
「そうだろう!隼人にも散々言っているのだがな…」
「あはは…ファンクラブの先輩からは期待はしないように、とは言われてます」
「そうか……ファンとしてはそんな態度をとられていると居た堪れなくなってしまうだろう?」
「そうですね…ふるいにかけられるように次から次へと辞めてっちゃいますねみんな」
最初はたくさんいたファンクラブメンバーも、新開先輩から見事にスルーされてしまうことが耐え切れなくて続々と辞めていって…
私の友人もその内の一人。最初は一緒に応援に行っていたのだけれど今はもうずっと独り。
3年の先輩もひと握りだけに。
優しい先輩ばかりだし、何よりも新開先輩を応援したいからファンクラブを辞めるつもりはないけれど。
「あ、東堂先輩お待たせしました。此方、貸し出し処理が完了しましたのでどうぞ。今日から2週間以内に返却お願いしますね」
「うむ、ありがとう。そうだ、良ければ君の名前を教えてはもらえないだろうか?」
「え、私ですか?2年のです」
「ちゃんか…覚えておこう。今度は、隼人だけではなくオレの応援も是非頼みたい」
「東堂先輩に顔を覚えてもらってただけでも光栄なのに名前まで…!ありがとうございます。機会があれば精一杯応援させてもらいますね!」
「そうか!ではその時を楽しみにしておこう」
「はい!練習頑張って下さいね!新開先輩にもめちゃめちゃ応援してますとお伝え下さい!」
図書室を後にする東堂先輩の後ろ姿を見つめていると、凄い人と話したのだなということに今更緊張して胸の鼓動が激しく音を立てて鳴り響いた。