第1章 くもり所により快晴
……え、私?なんて思っていれば東堂先輩から名前を呼ばれて。
「ちゃん!今日こそ、オレの応援をしてくれるのだろう!」
「え?あ、はいっ!東堂先輩頑張って下さい!」
「うむ!ありがとう!」
私が東堂先輩のことを応援すれば、満足そうに微笑んでからまた颯爽と自転車で駆け抜けて行った。
東堂先輩のファンクラブから悲鳴に似た声が上がったのが聞こえて慌てて其方を見れば、そのすぐ後をいつの間にか追い付いていたらしい新開先輩が駆け抜けて行くのが見えて、慌ててその後ろ姿に声援を送ったものの相変わらず反応も何もなくて…
あーもう!東堂先輩のせいで新開先輩の走ってるとこちゃんと見れなかったじゃん!
はあ…今日も新開先輩はチラッとでも私たちファンクラブの方を見てくれなかったなあ…
流石に心が折れそうになるというか…
「ちゃん!どうしたの東堂様から指名されるなんて!」
「指名だなんてそんな…!さっき図書委員で少し東堂先輩とお話しただけなんですけど…」
「本当にそれだけ?」
「それだけですよ!信じて下さい!私、新開先輩のこと大好きなんですから!」
「そうよね…でも東堂様って執着すると凄いって聞くし…もし、東堂様から何かされたらすぐに言って!みんなで助けるから!」
「先輩…!ありがとうございます!」
東堂様のファンクラブへの説明も任せておいて!と笑ってくれた先輩の頼もしいこと…!
新開先輩のファンクラブに所属し続けられるのは先輩が優しくていい人だってこともある。
だけど、確かにさっき東堂先輩から応援してくれって言われて頷いたけど…それを今要求されるとは…ていうかファンクラブの人たちから応援されてるんだからわざわざ私に言わなくても良いのに…不思議な人だな東堂先輩。
ーーでも、この件を境に新開先輩を追いかけるだけの平穏だった日常が目まぐるしく変化したのだった。